空間を感じる時

空間を感じる瞬間というのがあると思うのです。それは壁や天井で囲まれていればいいという訳ではなくて、それでは単に室内にいるという感じだから、空間を感じさせる何かに出会うといった方がわかりやすいかもしれない。

空間を感じさせる何か、それはいろいろあるかもしれない、もしかしたら、人によっても違うかもしれない。

そこに人がいれば、あるいは、椅子のような物が置いてあれば、その比較によって空間を感じるかもしれない。ただ、それは空間の大きさを感じるのであって、空間そのものを感じている訳ではない。

そう考えていくと、私が今思いつくのは光しかない。

光は太陽からの自然光と照明による人工光に分けられるが、どちらの光でも、光が当たっているから空間を認識して、空間そのものを感じることができる。真っ暗ならば空間を感じるだろうか。

ただ、ふと思った、真っ暗でも、もしかしたら空間を感じるかもしれない。そうすると、空間を感じることには2通りあるかもしれない。

実際の空間を感じることと、人の意識の中にある空間、それは過去にどこかで経験している記憶の中の空間ともいえるが、真っ暗になった時に人の意識の中にある空間を感じるようになるかもしれない。

ということは、普段、空間を感じている時、人は実際の空間と意識の中にある空間の2つを同時に重ね合わせているのかもしれないと思った。

そして、それは建築を建て替える時に、その時、その場所、その人特有の空間の感じ方をつくることができると思えた。

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家をつくること

真っ新な土地にして、まず基礎工事からはじめるのが実際の住宅の工事手順ですが、その前にどのような家にするのか、どのような家にしたいのかを工事ができるように具体的なものにするのが設計です。

その設計をまず最初から家の性能や指標や数値で考えていくやり方があります。例えば、高気密高断熱の家などのように、年間を通して快適な室内温度を保つことを目的に、具体的な計算式を使い、間取りから材料の選定や設備機器までを決めていく。

他に材料にこだわり、家づくりを進めていくやり方もあります。例えば、木の家であることを強調し、無垢の木を室内にたくさん使うことを大事にするなど。

最初にどのような家にしたいかのイメージが無い場合やどのような家にしたいかがわからない場合は、性能や指標や数値で考えたり、材料にこだわりを持つところから家づくりに入る方がわかりやすいかもしれませんが、流行りすたりがあります。

材料や設備などはどんどん進化しますが、家は一度建てたら、簡単に材料や設備を更新できません。だから、材料や設備などは年月が経ても価値が変わらない定番をおさえれば良いと考えています。

家の性能や指標や数値は計算式を知っていれば、誰でも年間を通して快適な室内温度を保つ設計はできます。

ただ、本来どのような家が良いかは住人によって一人一人ちがいます。材料や設備だけでは決まりません。その一人一人のちがいを考え、イメージし、合わせていき、家として具体的な形にして、工事ができるようにするのが本来の設計で、一人一人がイメージしやすいように手助けするのが設計者だと思います。

設計も工事も実際の家が完成するためのプロセスですが、工事は設計したものを実際の家にすることですから、その前の設計段階でどのような家かが決まります。

その設計を何度も経験する住人はいないでしょう。ならば、わからないことが多いけれど、その設計というプロセスを楽しみながら、今一度、一生に一度かもしれませんが、自分はどういう家に住みたいのかを想ってみるのもいいかもしれません。設計というプロセスは楽しいですよ。

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光を通す階段

よくやるのが階段で光を取り入れること、階段を吹抜けだと考えれば、窓の位置しだいで、光の量を自由に調整できる。

光の量を最大限にしたければ、階段の真上にトップライトを設ける、そもそもトップライトは壁にある窓より3倍の光の量が入ってくる。そして、階段の段板をメッシュやガラスにして、トップライトからの光を下まで落とせば、住宅密集地の1階でも明るくなる。

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特に、らせん階段を利用すると、最小の階段面積で、最大限の効果が得られる。

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窓明かりが見えた

東京アラートが発令されて、都庁とレインボーブリッジのライトアップが赤色に変化しましたが、色や照明で何かを抽象的に伝えるという手法は、言葉で直接わかるように伝えようと試みるより、深く印象的に伝わるように思います。

言葉だと字義通りの解釈しかできず、言葉使いや言い方、表現の仕方によっても、受け手の印象が変わり、場合によっては拒否反応が起こる可能性がありますが、色や照明のような抽象的な表現だと、それを見る人が自分の都合のいいように読み取り解釈することになるので、拒否反応が起こりにくく、読み取った解釈がより深く意識に入り込むのだと思います。

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よく、窓明かりがもれるように、それが道路から見えるようにします。外灯ではなく、窓の明かりだと、その家の住人ならば、直感的に誰かいる、もっというと、誰がいるかまでわかるはずです。

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それは夜帰ってきた時の喜びや嬉しさや安心感につながるような、それは人それぞれ解釈の仕方は違うかもしれませんが、少なくともわるくはない、ちょっとホッとするようなことかなと思いまして。

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外観の特徴は新たな人のため

外観に色を散りばめることをよくやります。それを外観の特徴としたいから、なぜ特徴にしたいか、それは建主自身がその家で自分に合った新しい生活をはじめるから、その家は建主にしか住みこなせない家だから。

完成するまで家と人は別々で接点がありません。そして、住みはじめることによって接点ができ、そこで家と人の関係性ができて、新たな人が誕生すると考えています。

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そして、その新たな人がさらに新たな家をつくり上げていく。その様を外観に特徴として表現する。その特徴はきっと今までに建主が目にしたことが無いものにすることによって、そこに新たな自分を感じ取って欲しいから。

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三角屋根の家の形

子供に家の形を描かせたら、たぶん、三角屋根を最初に描くだろう。それは大人も同じで、家=三角屋根が一般的な家のイメージ、アイコンのように、そういえば、サイトのホームへ戻るボタン、トップページへ戻るボタンも三角屋根の家のアイコンだったりする。

仕事場からいつも車で帰ってくるクライアントに、何か我が家に帰って来た感をプレゼントしたくて、それを外観で表現して、窓を設けずに、三角屋根の家の形を宙に浮かせて見せた。

宙に浮かせたのは車で帰って来た時に遠くからでも見えるにようにと、三角屋根の家の形が強く印象的に出るようにと、それが誰にでもわかる特徴となるようにと思って。

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外観の馴染む、突出するをミックスして

服も化粧も、自分が身につけるものや着飾るものは、自分と社会との関係性を表現したり、関係性を調整したりするものであり、TPOに合わせた服選びもその一種であり、それは建築でも同じであるという。

建築でいえば、棟飾りや玄関周りの装飾がそれに当たるかもしれない。今では見られなくなったが、その集落の長の家には特別な装飾が施されていた。

それをもっと発展させて考えると、建築の外観も社会との関係性を表現しているものといえるだろう。外観全体を考えると、その地域で突出したものというより、違和感なく馴染むものが求められ、地域によっては街づくりガイドラインなるものがあり、外観の仕様や色などが条例などで定められていて、それも主旨としては突出したものよりは馴染むものをつくらせるためにある。

例えば、昔からの宿場街のような古い街並みの意匠を守り、街並みの統一感を保とうとする場合は、馴染むものの方が良いだろうし、社会との関係性を表現する上でも、その地域においては古い街並みを維持することに社会的意義を見つけることができるだろうが、そのような場合では無い時、例えば、どこにでもある普通の住宅街ならば、馴染むだけが外観として、社会との関係性を表現することにはならず、反対に突出するという表現も社会との関係性を考えて許される表現であるはずであり、突出することにより、その建築を基点として、周辺環境に良い影響が沁み渡るような外観になったならば、それはそれで素晴らしいと考えている。

私の場合、大体、外観に関してはクライアントから要望を言われることがほとんど無く、逆に、私の方から提案して、それが採用される場合がほとんどである。

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提案する際には、馴染むと突出するを使い分けて、地域での見え方、あと、クライアントの人柄とイメージが合うようなものや、馴染む場合でも、突出する場合でも、全体全部を馴染むか突出するかに振る訳ではなくて、割合として、馴染むを多めにするか、突出するを多めにするか、バランスを考えて、大体、どちらかが微妙な、ほんの僅かな差で多くなるようにミックスして外観のデザインを決めていく。

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