木目を装飾として扱う

木の仕上げが施された空間にいると、他の仕上げ、例えば、コンクリート打放しの空間にいるより、癒されたり、落ち着いたりするのだろうか。

よく木をたくさん室内の仕上げに使うことを特徴とする住宅や商品化住宅がある。木をたくさん使う目的は、癒しであったり、木が自然を象徴し、自然を取り入れているというイメージの良さがあったり、また、それを望んでいる人も多いからだろう。

ただ、別の見方をして、木の表面の木目だけを取り出して考えてみることもできる。木目という装飾であり、木目という記号であり、無垢の木とは別もので、表面の木目だけを独立して考えてみる見方である。そうなれば、木もクロスやペンキや金属などの表面の仕上げの種類のひとつでしかなく、木の仕上げに特別な意味がなくなる。

装飾とは外の世界との調整をはかるためのものであり、装飾をして、自分の立ち位置を明確にするというお約束がある一種の記号のようなものでもある。

だから、クロスでもない、ペンキでもない、金属でもない、木目という装飾を施すことを選択する時点で、外の世界との調整がはじまり、立ち位置がはっきりしてくる。その調整や立ち位置の取り方を別の言い方で表現すればデザインになる。

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その木目のデザインの範疇には、当然、癒しや落ち着きなどの感情も含まれるだろうが、そこで止まってしまっては木目の持つデザインの可能性を活かし切れていないと考えており、木目を装飾として意識して、何かとそれを取り巻く世界や環境との折り合いをつけるために、選択肢のひとつとして木目を利用する。そうしてはじめて、木が癒しや落ち着きなどの感情を与えるだけのものから離れて、素材として、もっと自由に、もっと創造性豊かに扱えるようになる。

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