そこで存在する形にする

これから景色が変わる土地にできた細長い小さな変形地、三面が道路に接する、線路際、これから高架になる、たぶん、全く雰囲気が変わるだろう。

そこに予想される建築は本当に小さい、小さな飲食兼料理教室で平屋、それだけに建築全体の形がわかりやすい。周辺の環境が変化していく中で、この小さな建築は変化に流されず、その変化を利用して、存在感を出さなくてはならない。住宅ならば、その変化に対応して住環境を整える必要があるが、飲食店ならば、まずここにお店らしきものがある形をしていないと、誰の関心も引かない。

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派手で目立つのではなく、周りは住宅だから、住宅のスケール感は去就しつつ、飲食店としての外しやズレを挿入しようと考えている。

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建築の塩梅

外観が基壇、中段、頂部の構成の場合、古典的なイメージになり、モダニズム建築は頂部を無くすことにより、新しい建築の見え方をつくろとした。それはモダニズムの考え方を伝えようとする時の手段として、建築の見え方を選択したのであり、新しさや考えを理解してもらうためには視覚に訴える、見え方を変えることがわかりやすい。

そして、その変え方も極端ではかえってわからなくなる。モダニズムの場合も、外観の構成を扱うということは同じであり、その中で変える、ちょっと変えることにより、変わったことがわかる、この変わったことがわかることが重要で、「あの建築は何か違う」と思わせないと。

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わかりやすくもあり、同時にちょっと変わったわかりにくい部分がちょっぴり存在するような建築がいい、それが建築をつくる時の塩梅としてちょうどいい。

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外観の構成によるイメージの違い

基壇、中段、頂部という分け方をする。建築を外から見た時に、基壇と呼ばれる基礎部分があり、頂部と呼ばれる屋根や飾りがあり、その基壇と頂部の間を中段とする。洋の東西を問わず、日本の寺院建築、ギリシャの神殿もこの基壇、中段、頂部の構成になっていて、建築の外観の構成の基本として古来よりあります。

だから、外観が基壇、中段、頂部の構成になっているのがハッキリとわかる場合、その建築は古典的なイメージを纏うことになります。

なので、モダニズム建築は前時代からのこの基本の外観の構成を去就せず、頂部を無くか、より目立たなくして、基壇と中段だけの構成を取ることによって、古典的なイメージから脱却し、新しい建築の見え方をつくろとし、それは今でも引き継がれています。

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建築を外観の構成で見ていくと、基壇、中段、頂部の構成になっているか、頂部があるのか無いのかと、外観のイメージとの相関関係が面白いです。

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服を着こなすように、らしさを形にする

らしさを形にする、その時の外すズラし方の指南は「人に受け入れやすくするために行う」とした。きっとそれは着こなしのようなことかと思います。

どんなに素晴らしい服でも、自分のサイズに合っていなければ、その服は似合わないし、おかしい。さらに、サイズが合っていたとしても、その服をただ着るだけならば、皆同じになってしまう。その服をどう着るのか、どうアレンジするのか、それがその服を着る人固有のものになり、そこに独創性が生まれる。

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だから、まず精度高く、素晴らしい服を用意し、それを着こなす時に、外しズラし、らしさを独創的に発揮する。それがらしさを形にすることです。

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らしさを形にすることは独創

らしさを形にする時、どこにでもあるような、特徴のない形になってしまうことは避けたい。たぶん、らしさを形にする時、そこが一番抵抗を感じるところだと思います。誰も見たことが無いものをつくりたい、新しいものをつくりたいと考える。その考え自体は良いと思います、そうでないと新しいものは生まれないから。

ただしかし、新しいかどうか、誰も見たことが無いかどうかは誰が判断して、誰のためになるのでしょうか。新しくて、誰も見たことが無いものをつくるのは案外簡単なのです。人に受け入れられることを考えなくても良ければ、誰でもできる。

らしさを形にする最大の目的は、人に受け入れられやすくするためです。独創とは、人の上に成り立ち、尚且つ、滅私したところに存在すると思うのです。滅私、すなわち、それはらしさを纏うこと、その上で、誰にもできないものをつくり出す、精度を高めて、外しズラして。

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だから、外すズラし方の指南は「人に受け入れやすくするために行う」です。それだけでイメージが湧いてくるはず、難解に見せる、面白く見せるためでは無くて、外しズラした方がより人が良いと思い受け入れる、そして、それが独創になる。この場合の人は、特定の個人、クライアントでもいいですし、不特定多数の人、社会に生きる全ての人でもいい、用途により、それは違うでしょう。

らしさを形にすることが、実は独創につながる、これを理解できている人は案外少ないかもしれないです。

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らしさを形にする手法

らしさを形にする時、どこにでもあるような、特徴のない形になってしまう可能性があり、だから、同時にその形が特徴にもなることを考えなくてはならない。

これは建築だけのことではなくて、デザイン全般、あるいは、ものづくり全般に、料理にもいえることだと思います。

そのための手法は2つあると考えていて、ひとつは外すズラす、もうひとつは精度を上げる。

外すズラすは、そこにほんの少しの違和感を挿入することです。「らしさ」はそのものではなく、どこにでもあるような特徴のない形はそのものか、そのものを真似た形であり、そこに僅かな、本当に少しの変化や、異物や、異形などを施すことにより、らしいもの、「らしさ」を纏ったものにする。

もっと付け加えますと、その外しズラした部分が見る者の意識に引っ掛かりを与え、見る者の想像力を掻き立てるので、より印象に残りやすい。

もうひとつの精度を上げるは、簡単にいうとクオリティを上げることです。形は同じでも、精度が高いだけで特徴になります。「らしさ」を追求した結果、どこにでもあるような特徴のない形になったとしても、そこから細部にわたって形のつくりの精度を上げていけば、その形の完成度が高くなり、結果的にそれが特徴になります。

ただ、精度を上げるためには、高い意識と高度な技術が必要になり、それだけに誰にでもできることではなくて、だから、特徴になります。

反対に、外すズラすは、高度な技術が無くてもできます。なぜならば、外すズラすは、精度を落とす行為と同じことをするからで、それだけに誰にでもできることですが、今度は外し方、ズラし方が重要になってきて、そこが直接特徴になる訳ですから、外すズラすための高い能力が要求されます。

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どちらの手法でも特徴ある「らしさ」を形にしたものをつくることはできるので、あとはどちらを選択するかですが、できれば、精度高く外しズラした形をつくりたいと考えています。

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らしさを形にする時は注意

らしさを形で出そうと考えています。素材もあると思いますが、瞬時の印象で一番残るのは形だろうと思います。

本当に小さな建築になる、だから、外形を一目で把握できてしまう。その形に好き嫌いの感情が伴うこともあるでしょう。全く好き嫌いの感情を外して成り立つことは考えにくいので、好き嫌いを超えた形をつくりたいと考えています。

好き嫌いを超越するには、やはり「らしさ」が必要になるのではないでしょうか。誰もが連想できる形、それが「らしさ」だとしたら、「らしさ」があれば、好き嫌いの感情がそもそも起きにくいのではないかと思います。

「らしさ」を別の言い方をすれば「馴染みやすさ」になるかもしれません。それが安心感を呼び、その安心感がその形を受け入れやすくする。ただそうなると、案外、どこにでもあるような、特徴のない形になってしまう可能性もあります。それが「らしさ」を形にする時に注意をしなくてはいけないところでしょう。

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だから、「らしさ」を形にしながら、それが特徴にもなることを同時に考えなくてはなりません。

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