建築である証拠

どこまでも永遠に続く空間がもし存在したら、それは建築というだろうかと考えた。

例えば、コルビュジエの「無限発展の美術館」という構想があり、その実現例が上野の西洋美術館だが、それは渦巻状の動線空間になっていて、無限にぐるぐると渦巻状に拡張していくことを想定していた。だだ、実際には終わりがあり、そこで壁ができて終わるのだが、そもそも、渦巻き状の空間を想定している時点で建築だった。

もし、ただ広い、あるいは、ただ長い、それも永遠に続きそうなくらいの規模の空間であったなら、もはやそれは「自然」と読んでもいいのではないかと思う。

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ということは、建築である証拠は、終わりがある壁で囲まれていていることであり、それも人の営みが行われる範囲である必要がある。

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人が使うか、人間が使うか

建築でできることは何があるのかと考えながら設計する。当たり前のことだけど、特に何も考えなくてもプランはできる。そして、その違いはわかる。

そこに人がいると感じられるか、人間がいると感じるか。ある特定の人でも、不特定多数の人でも、人が使うと考えているのか、人を社会の中で定量的に扱ったのが人間ならば、人間が使うと考えているのか。

人が使うと考えた時、ムダやブレ、揺らぎなどが生じる、決して完璧ではない、だから、偶発的な面白さを演出するような設計になる。

人間が使うと考えた時、ムダやブレ、揺らぎは無く、全てが計画通りに進み、その場合の効果が期待できるような設計になる。

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どちらかが良いという訳ではないが、偶発的な面白さが生きることや生活することには必要だと考えるならば、人を感じられる設計をすることなるだろう、実際それしかしたことがないが。

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三角屋根をさらに傾斜させる

天井の高さに変化を付けたく、それも居る場所によって全て高さが違うようにしたくて、ただ、天井だけを装飾として扱い、高さを変化させることもできるが、それでは構造を持った建築でわざわざ行う必要が無く、構造を持たない内装設計でいくらでも見ることはできるので、構造と一体となった、その天井の高さの変化がそのまま外観のフォルムになるように考えている。

どうも木造で小さな建築となると三角屋根を最初にイメージしてしまい、そのフォルムは単純でアイコンとして「ホーム」をイメージさせるが、ただ、それだけにそのフォルムでは引っ掛かりも無く、印象に残りにくい。

三角屋根の屋根裏の形状は天井を設けなければ、屋根なりの形がそのまま室内に露出するので、天井の高さは変化する、しかし、居る場所によって全て高さが違うようにはならない。

ならば、三角屋根自体を傾斜させようと考えた。そうすれば、居る場所によって全ての天井高さが違うようになる。

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そして、そのフォルムは、三角屋根という昔からあるアイテムでの安心感が、室内での天井の高さの変化が居る場所によって全て違うという慣れない状況を上手く緩和してくれて、ことをうまく馴染ませてくれるだろう。

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ピクチャーウインドウより風が納涼を生む

風景を切り取る窓のことをピクチャーウインドウというが、それは逆に考えれば、外から見たら室内の風景をも切り取る。

壁一枚隔てただけで、外と内という全く違う世界がそこに展開されているが、その壁の性能が低かった頃は、壁の性能とは断熱性や遮音性などであるが、外と内の差はほとんどなくて、外も内も大して違いがなかったのではないかと思う。

それは温熱環境や音環境だけのことではなくても、内にいても雨風を凌げるだけで外と変わらないような状況であり、結果的に外と内の違いが曖昧だった。

ところが、壁の性能が高まると外と内はキッチリと分かれ、全く違う世界が誕生することなった。温熱環境や音環境だけのことを考えた場合でも、それは内だけが静かで、夏涼しく、冬暖かい場となり、外とは全く関連性の無い内が存在し、曖昧さが無い。

この曖昧さが無い様、この外と内のキッチリと分かれた関係性には違和感を覚える。それは中から見ればピクチャーウインドウだが、それは同時に外からも中を切り取る関係性に似て、外と内が一対であるにもかかわらず、外と内が断絶している。

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理想は壁の性能が高く、そのおかげで温熱環境や音環境が良く、それでいて外と内の関係性が曖昧である状況なのだが、壁だけでなく屋根も含めて外皮の性能を高めていくと、普通に考えれば、どうしてもピクチャーウインドウ的な窓ばかりになるが、ちょっと視点を変えて、風も利用してみる、その風のことを卓越風というが、地域特有の風向きを持つもので、それを利用すれば、そもそも外と内が曖昧にならざるを得ない。

外皮の性能を高めて魔法瓶のような住宅をつくっても夏が暑くなり、冷房効率が悪くなるだけだから、風を利用するのが良いだろう。

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四半世紀前の思いつき

カウンターはステンレス鏡面仕上げで、それが折れ曲がり椅子になり、床になり、壁になり周りの風景を写し出す。

そのまま天井になり、空間を包み、同時に屋根になり、建物の構造を兼ねる。

すき間があれば、設備も断熱も施せるから、入れ子状に空間を包みこもうと考えると、カウンターの形状から変わってくる、などと確か学生の時に思いついた案を今計画中の建築に合わせて取り入れてみる。

四半世紀経ってもふと考えることは同じだったりして、ただ違うのはどうやって実現すればいいかがすぐに見当がつくこと。

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プロトタイプから言葉から数値へと

まずプロトタイプをつくり、その物から考えるようにしてみる。とりあえず、手を動かして、思いつくままに、こうかな、ああかなとやってみる。そして、出来上がった物を解説してみる、無理矢理、突然プレゼンをしなくてはならない体で、あるいは、文章にしてみる。そうすると、大概、意味不明で、辻褄が合わない、矛盾したり、支離滅裂になる、きっと人がパッと思いつくことなど、その程度のことなのだろうか。

ただ、そこに辿り着きたい部分の種があったりするような気がするし、そうあって欲しいと思う。

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そこで、今計画中の10坪平屋の飲食店兼料理教室をそうしてみた。そうしたら、案外、言葉は自由だなと思って、あれこれ書いていたら、途中から言葉が追いつかず、そうすると、そろそろ数値で表そうかなと思いはじめた。

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距離感を考えてみたら

距離を取るには折りたたむしかない。10坪の中に納めるためには丁寧に折りたたんで、角を取って丸くして、周長をできるだけ長くしてより席数を稼ぎ、それで複雑な席配置にし、様々な方向に顔が向き、相対する事なく、距離感を調整でき、天井高さの変化がより席同士の違いを生み出し、ひとつとして同じ条件の席は存在しない。

そのことは、席の領域の決め方で、そこで起こる状況を決めることができ、コントロールすることができるので、ソーシャルディスタンスの有無に左右されずに済むと考えている。

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この状況化に対応することで、今まで手を付けなかったことに目を向けて、新たな何かが芽生える可能性だけでも感じることができたら、後から振り返った時に肯定的に思えるかもしれない。

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